1:2014/09/07(日) 23:45:04.28 ID:
【鼓動】先住民の島にコンビニ進出、台湾で論争
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140907/chn14090712000001-n1.htm
産経新聞(台湾・台東県蘭嶼 田中靖人、写真も) 2014.9.7 12:00 [鼓動]


 台湾南東部の先住民が住む離島、蘭(らん)嶼(しょ)へのコンビニエンスストアの進出計画をめぐり、芸能人らが「伝統文化を破壊する」と反対し、論争になっている。先住民文化の尊重か島民の利便性の向上か。間に立たされた企業側は8月上旬の開業を延期し、開店のめどは立っていない。

 蘭嶼は太平洋に浮かぶ約50平方キロの小島。コチョウランが自生することから戦後、この名が付いた。熱帯雨林気候に属し、島の大半は山岳地で、火山島特有の奇岩や青い海が観光客の目を楽しませる。

 登記上の人口は約5千人で、約9割がフィリピン北部から来た台湾唯一の海洋民族ヤミ族(別名タオ族)だが、島外への出稼ぎが多く、居住者はさらに少ない。島への主な交通手段は、繁忙期で1日計4便の連絡船か、同8便の小型機(約20人乗り)に限られる。

 島にはトビウオ漁など伝統的な農漁業と民宿を中心とする観光業以外に目立った産業はない。島全体が先住民の「保留地」に指定され、法令上、部族の同意なしに開発できない仕組みになっている。

 ヤミ族は海沿い6カ所の集落に分かれて住み、東部には伝統的な木造の半地下家屋「地下屋」に住む人もいる。他の集落はコンクリート製の2階建て家屋が中心だが、1本しかない島の周回道路上には放牧のヤギが群れをなし、のどかさを感じさせる。

 この島の西部に、台湾で「セブンイレブン」を展開する企業「統一超商」がフランチャイズ方式での進出を発表したのは7月11日。自身もヤミ族で蘭嶼郷公所(村役場)の事務統括者、鐘馬雄秘書(65)は、「魚を取って夜中の1時、2時に港に帰る島民にとり、24時間営業のコンビニ店ができるのは良いことだ」と進出を歓迎する。かつては悪天候時に島内の商店から品物がなくなることもあったといい、大企業の物流網に加わることへの安心感もあるようだ。

 だが、若手俳優の宥勝氏(32)が、フェイスブックで、「蘭嶼が文明化すれば、台湾(本島)同様、何の特徴もない社会になる」と反対を表明。作家の劉克襄氏(57)も、毎月末の「信用払い」に象徴される共同体文化が破壊される、とする文書を発表し、報道で相次いで取り上げられた。

 これを受け、先住民政策を主管する行政院(内閣に相当)の「原住民族委員会」は、「部族の人々の決定を尊重する」と地元との協議を促す声明を発表。統一超商は開店の延期を決め、現在も開店時期は「未定」としている。

 コンビニ店の共同出資者で、台湾本島から移住してきた漢民族の李明発氏(46)は「蘭嶼の住民なら話し合って説得もできるが、なぜ島外の人間が反対するのか」と憤りを隠さない。「先住民もスマートフォン(高機能携帯電話)を持つ時代。台北で享受できる生活を蘭嶼でしてはいけないという理由はない」と開業を目指す考えだ。

 台湾東部の東華大学でヤミ族の文化を研究する楊政賢准教授は「かつて物々交換だったヤミ族も現在は貨幣経済に組み込まれ、そのこと自体は逆戻りできない。ただ、ヤミ族のことはヤミ族自身で決めるべきだ」と話している。

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写真:蘭嶼にある先住民ヤミ族の伝統家屋「地下屋」。居住者がいる家屋もあるが、観光客の見学専用になっているところも