1:2017/03/25(土) 07:45:03.21 ID:
 中国のアジア地域での権益は拡張している。国内総生産(GDP)も域内のどの国よりも規模が大きい。これらを合わせると中国には、国家安全保障上の目的を達成するために行使できる恐るべき多数の経済的手段が備わっていることになる。

 この点にごく最近気付いた国が韓国だ。米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に合意した韓国は、中国からの経済的制裁に見舞われた。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)エコノミクスの分析に基づくと、中国の圧力に最ももろいのは韓国やマレーシアなどで、相対的に強いとみられるのは日本とベトナムだ。

ベトナムが最も安定

 東アジアを見渡すと、韓国、日本、台湾、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、ベトナムが中国との間で安全保障あるいは領土をめぐる紛争を抱えている。どの国・地域が中国からの提案を受け入れたり引き下がる可能性が高いか。この答えを探るため、BIエコノミクスは貿易、観光、投資、失業の4項目の指標からランク付けを試みた。

 貿易面をみると、中国が輸入制限すれば、中国との貿易黒字が対GDP比で大きい国が打撃を受ける。韓国のその割合は6%、マレーシアが7%で最も高いようだ。対中国でかなりの貿易赤字となっているベトナムは最も安全だ。

 とはいえ、中国は特定の製品に輸入制限を課す可能性がある。韓国がTHAAD配備に備える中、中国は健康と安全性の懸念などを理由に化粧品から温水洗浄便座に至る韓国製品の輸入を禁じた。

日本はインフラ強み

 観光面については、中国の中間層の拡大によって、域内の各国・地域では中国からの観光客が重要な収入源となりつつある。中国人観光客のキャンセルでどんな状況になるかを韓国は今、目の当たりにしている。国内の人口に対する中国人の年間訪問者数で考えると、お隣の台湾と韓国がこのリスクに最もさらされている。

 これに対し、中国人観光客の割合が最も低いのはフィリピンだ。

 投資の観点では中国のアジア投資ポートフォリオは膨らんでいる。東南アジアでは中国の「一帯一路」構想に賛同する国にゲームチェンジャーとなるような投資が供与されることもあり得る。

 対GDP比で中国からの直接投資のストックが最も大きいのはベトナムであり、プロジェクトのパイプラインが干上がれば影響は最も大きい。これと対照的なのは、自国で進んだインフラを持ち、歴史的に中国との問題を抱える日本だ。

第一の手掛かりに

 一方、失業率が低い国は相対的に、中国による経済上の脅しあるいは約束に対して抵抗力があるだろう。失業率が高い国は反応しやすいかもしれない。域内で深刻な失業率に苦しむ国はないので、この点では比較的強いようだ。

 このランキングは、中国の経済的制裁のリスクに最もさらされている国を決定的に示すものではない。歴史的データに基づくランキングでは、将来起こり得るシフトの把握はもちろんできない。例えば、企業のリスクという問題は簡単な数字で捉えることが困難だ。韓国のロッテグループはTHAAD配備に向けて土地の提供に合意した後、中国で批判を受けている。

 データ中心のアプローチには限界がある。だがそうであっても、安全保障上の利益のために中国が経済的手段を使った力の誇示を一段と図りつつあるようにみえる現在、このリスクランキングは第一の手掛かりを提供してくれるだろう。
 
(ブルームバーグ Tom Orlik、Justin Jimenez)


http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170325/mcb1703250500003-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170325/mcb1703250500003-n2.htm


24日、フィリピンのマニラ近郊で行われた中国による南シナ海の軍事化に抗議するデモ(AP)