1:2017/02/17(金) 07:24:30.36 ID:
 マッド・ドッグは、ただ吠えるだけではなかった。

 米国のマティス国防長官のニックネーム「マッド・ドッグ」は「狂犬」を意味するだけでなく、勇猛果敢さをたたえる尊称でもあるが、荒々しさをイメージさせる。だが、2月3、4両日に来日した際にマティス氏はもう1つの異名「戦う修道士」の片鱗をうかがわせた。それは4日に行われた稲田朋美防衛相との共同記者会見でのことだった。

 「今この時点で軍事作戦の必要はない。外交官によって解決するのがベストだ」

 マティス氏は、中国が軍事施設建設を進める南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島問題について問われ、こう答えた。この発言が際立つのは、トランプ米政権の「閣内不一致」とでも呼べる側面をはらんでいるからだ。

 トランプ大統領から国務長官に指名されたティラーソン氏は1月11日の米上院承認公聴会で、スプラトリー諸島をめぐるオバマ前政権の対応を批判し、「中国に明確なシグナルを送る必要がある。第1に人工島建設をやめること。第2に人工島に近づくことは許されないということだ」と述べていた。

 ティラーソン氏の発言は、米国内で「島に対する中国の接近を軍事力で阻止することを示唆した」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と受け止められている。それだけに、「軍事作戦の必要はない」というマティス氏の発言は、ティラーソン氏のシグナルを修正する意味を持つ。

 もちろん、マティス氏が安倍首相との会談や共同記者会見で見せたのは、中国に対して物わかりの良い顔だけではなかった。

 日米安全保障条約第5条の尖閣諸島(沖縄県石垣市)への適用を明言し、南シナ海についても「中国は地域諸国の信頼をズタズタにした」と批判した。安倍・マティス会談に同席した関係者によると、「中国は冊封体制(tributary system)を復活させようとしている」とも述べ、地域覇権を追求する中国の動向に懸念を示したという。

 こうした発言は、発足間もないトランプ政権が不安視されていた中で、日本政府が待ち望んでいたものだった。マティス氏の影響は米軍最高司令官である大統領にも及んだ。トランプ氏は10日にワシントンで行われた日米首脳会談で、マティス氏が来日中に示した路線をほとんどそのまま尊重する姿勢を示した。

 マティス氏の落ち着いた物腰や知的な言葉遣いもあり、防衛省幹部は「オーラが違う。米国で尊敬される理由が分かった」と述べ、感銘を受けた様子を隠さない。今やマティス氏は、日本政府が最も強い信頼を寄せるトランプ政権幹部と言っても過言ではない。

 「マティスがいるから安全保障は大丈夫」

 知日派として知られるフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が13日に辞任した際、外務省幹部が日米同盟への影響を否定した根拠は、やはりマティス氏だった。

 マティス氏の存在が日本政府にとって安心材料であるのと同様に、中国共産党指導部も、軍事力行使を否定したマティス氏の発言に胸をなで下ろしているかもしれない。しかし、中国が喜ぶのはまだ早い。マティス氏は「今この時点では」「現時点では」と繰り返し、米政府の判断が変化する可能性も示唆している。

 中国が聞く耳を持つなら戦わないが、これまでと同じように人工島建設を進めるのであれば、米軍は中国軍と衝突することを辞さない-。数々の戦場を渡り歩いたマティス氏は、硬軟織り交ぜたメッセージを送った。戦う修道士は防衛省内の記者会見場に身を置きながら、中国とのパワーゲームに臨んでいたのかもしれない。
 
(政治部 杉本康士)

http://www.sankei.com/premium/news/170217/prm1702170008-n1.html


安倍晋三首相との会談を終えたマティス米国防長官=2月3日午後、首相官邸(斎藤良雄撮影)
 
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儀仗隊の栄誉礼を受けるマティス米国防長官。左は稲田朋美防衛相=2月4日午前、防衛省
 
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安倍晋三首相と握手するマティス米国防長官(左)=2月3日午後、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)