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:2016/11/04(金) 01:38:43.26 ID:
 日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征会長らが参加する経済界の訪中団は9月21日、北京市の人民大会堂で中国の張高麗副首相と会談した。日中経済協会の宗岡正二会長(新日鐵住金会長)は「(鉄鋼などの)過剰生産能力の削減とゾンビ企業の淘汰を引き続き進めてもらいたい」と要請した。

 張副首相は改革を進めるとしつつも「(過剰生産は)かなり改善されている」と述べ、日本側の認識と、かなりのズレを見せた。

 中国の鉄鋼業界は、国内景気の減速もあって過剰生産に陥り、投げ売り同然の安値で鋼材を輸出している。これが鋼材の国際市況を悪化させる元凶となっている。

 そのため先進国の鉄鋼メーカーは2012年、13年にドン底にたたき落とされた。日米欧の各社は製鉄所の休止や売却を進めたが、中国と韓国のメーカーだけは、逆に生産設備を増強した。

 中国が鉄鋼製品を安値で輸出していることに対して世界中で不満が高まっている。それにもかかわらず、中国政府は世界最大の鉄鋼メーカーをつくる野望を隠さない。

国有企業の巨大化で世界トップを狙う

 中国の鉄鋼再編は政府のサジ加減ひとつで決まる。つまり、官製再編といえる。

 宝鋼集団(上海市)と武漢鋼鉄集団(湖北省)は9月20日、両社の上場子会社である宝山鋼鉄と武漢鋼鉄の統合計画を発表した。株式交換により宝山鋼鉄が武漢鋼鉄を吸収合併する。

 国務院傘下の国有資産監督管理委員会が全株を保有する親会社2社に関して、どういう道筋で経営統合するのかについての具体策は公表されていない。中国メディアによると、宝鋼集団が中国宝武鋼鉄集団に社名変更した上、武漢鋼鉄集団が、その傘下に入る案が有力視されている。

 中国の鉄鋼産業は景気減速でビル建設などに使う鋼材の需要が減ったため、深刻な供給過剰に陥った。そこで、中国政府は20年までに総生産能力の約1割に相当する1億~1億5000万トンを削減する目標を掲げたが、生産設備の廃棄は十分に進んでおらず、今回、政府主導で国有大手2社を合併させた。両社の統合を機に下位メーカーの淘汰を加速させる狙いが秘められている。

 9月21日付ウォールストリートジャーナル電子版は、「宝鋼集団出身で現在は武漢鋼鉄集団の菫事長を務める馬国強氏は7月、中国国営新華社通信に対し、過剰生産能力の削減には『真の再編』が必要だとし、『巨大合併によって再編がうまく進むとは限らない』と語っていた」と報じた。

 さらに同紙は「中国の大型製鉄所の効率はこの10年間、米国や日本、韓国の製鉄所に比べ間違いなく低下している。武漢鋼鉄の総資産利益率(ROA)は2015年にマイナス3.6%となり2004年の16%から大きく低下した」と伝えた。

 中国政府は、その解決策として2社を合併させ、世界最大の鉄鋼メーカーをつくり出すことを狙ったわけだ。

新日鐵が技術供与

 世界鉄鋼協会によると、15年の粗鋼生産能力は宝鋼集団(3490万トン)が世界第5位、武漢鋼鉄集団(2580万トン)は11位。経営統合が実現すると、現在3位の新日鐵住金(4640万トン)を上回り、欧州のアルセロール・ミタル(9710万トン)に次ぐ、世界第2位の鉄鋼メーカーが誕生する。

 宝鋼集団傘下の宝山鋼鉄は、初の臨海製鉄所として新日本製鐵(現新日鐵住金)の技術支援のもとで、上海に設立された。新日鐵の君津、大分、八幡製鉄所をモデルに最新鋭の設備が導入され、近代的な工場管理システムが移植された。もちろん、中国で初めてだ。

 山崎豊子のベストセラー小説『大地の子』(文春文庫)は、上海宝山製鉄所の誕生をモデルにしたといわれている。

 日本のODA(政府開発援助)によって、中国側は一銭も払わずに、このプロジェクトを仕上げた。鉄鋼の技術供与、つまり無償による技術流出の対象第1号となった宝鋼集団が、新日鐵住金を抜いて第2位の巨大鉄鋼メーカーに変身する。歴史の皮肉といえる。

http://biz-journal.jp/2016/11/post_17069.html

>>2以降に続く)