1:2016/08/23(火) 00:23:04.53 ID:
 ドルへの挑戦をめざす中国の人民元戦略が行き詰まっている。人民元切り下げから1年を経て、元安に歯止めがかからず、通貨防衛のため、自由化を見合わさざるをえなくなっているからだ。それ以上に、南シナ海から東シナ海に及ぶ海洋進出で中国が国際信認を失墜させていることが大きく響いている。信認なくして国際通貨は成り立たない。海洋進出と人民元戦略を連動させようとする習近平政権の思惑は、大きな矛盾に陥っている。
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緊張の高まる南シナ海を航行する中国海警局の巡視船。中国が「海洋強国」への軍事戦略に傾斜すれば、中国の経済再生への道は遠くなる。(写真:ロイター/アフロ)

構想は壮大だが

 中国の人民元戦略の構想は壮大である。決済通貨から準備通貨へと30年計画で国際通貨化を進め、基軸通貨ドルに対抗しよう構想である。ドル・ユーロ・人民元の3大通貨の時代が到来することを想定している。

 人民元は昨年11月に国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨となることが決まり、国際通貨として「認知」された。ドル、ユーロ、英ポンド、日本円だけのバスケットだったSDRに人民元が加えられたのは、人民元国際化の象徴と考えられている。さっそく、SDR建て債券市場の育成に乗り出している。

 合わせて、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を中国主導で設立した。創設メンバーはアジアや欧州など57カ国で、日米などをのぞく主要国がこぞって参加した。本部は北京で、総裁は中国の金立群・元財務次官。理事は北京に常駐しない。中国が出資の約3割を握り、事実上の拒否権をもつ。中国による中国のための国際機関の色彩が濃い。

 習国家主席が構想を打ち上げてわずか2年で実現にこぎつけた。第2次大戦後の米国主導のIMF・世界銀行体制に挑戦状をつきつけるものともいえる。中国がAIIB実現に動いたのは、IMFの出資をめぐって、中国が米国、日本に続く第3位になるはずだったのに、いつまでたっても米議会の承認が得られなかったからだ。業を煮やして、中国主導の国際機関創設に動いたのである。

 それは「一帯一路」構想と合わせて、アジアから欧州に続く中華経済圏を形成しようという戦略である。アジアのインフラ投資で鋼材需要を引き出す思惑もある。国際通貨としての人民元の地盤を拡大する戦略でもある。

切り下げで国際化足踏み

 その人民元戦略は、しかし中国経済の減速と元安のもとで、足踏みしている。中国は2015年8月11日、人民元切り下げに踏み切った。しかし、中国の成長屈折は鮮明で人民元の下落に歯止めがかからない。そこで中国当局は資本流出を防ぐため人民元売りの監視を強化している。これは、人民元国際化に欠かせない自由化の路線に逆行するものである。

 そうでなくとも、国際通貨の条件である資本取引の開放はなかなか進まない。人民元を管理相場から完全変動相場制にするのが中国人民銀行の最終目標だが、当面は通貨防衛のため管理相場化を強めざるをえない状況である。

 国際通貨の第1段階である決済通貨化も停滞している。2015年8月にはシェアで日本円を抜き4位(2・79%)に浮上したが、最近は2%以下に低迷し、6位まで低下した。

 国家資本主義を維持しながら、人民元を国際通貨に仕立て上げる戦略には、構造的矛盾があるといわざるをえない。

海洋進出で信認失墜

 それ以上に、中国はいま海洋進出をめぐって国際的な信認を失っている。信認の失墜が人民元の国際化を阻む。国際通貨の基本的条件は、その国の幅広い信認であるからだ。いま人民元戦略は海洋に沈んでいる。

 国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所は7月12日、南シナ海での中国の主権を認めないとの判断を下した。中国が主張する独自の境界線「九段線」は国際法上根拠がないと認定した。
南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶと主張する中国の全面敗訴である。中国が埋め立てを進めた人工島も「島」と呼べないとし、南シナ海への進出そのものに疑問を呈した。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/082100006/

>>2以降に続く)