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:2016/08/12(金) 17:22:53.84 ID:
 中国・北京で、地下水の大量使用による地盤沈下が深刻化している。このほど公表された調査結果によると、最大で年10センチ以上も沈んでいるという。専門家は、鉄道やビルなどの構造物が崩壊する危険性があると警告している。中国では、世界最大の人口と急速な経済成長によって急増する飲料水や工業用水の多くを地下水に依存しており、北京以外の都市でも過剰なくみ上げによる地盤沈下が進んでおり、
このまま放置すれば、数十年後には沿岸部で都市が海に沈んでしまう恐れも指摘されている。

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 この調査結果は、6月下旬に地球観測などに関するオープンアクセス・ジャーナル「リモート・センシング」で公表され、欧米メディアが相次いで伝えた。それによると、中国のほか、スペインやドイツの専門家による国際調査団が、2003年から2010年までの衛星画像とGPS(全地球測位システム)データを解析し、地盤沈下の分布図を作成した。

 それによると、北京の平均沈下率は年2.94センチで、東部の朝陽区で、最大となる年約10センチの沈下を観測した。調査対象期間中の沈下は76センチにも上る。朝陽区には、急ピッチで開発が進むビジネス街があり、高層ビルやホテルがホテルが建ち並んでいる。

 分布図を分析したところ、地盤沈下を観測した地点で、地下水の水位が低下していることを確認。地盤が柔らかい地域ほど沈下が激しく、地下水をくみ上げるポンプの場所と相関関係にあることも判明した。

 調査団は「地下水が枯渇し、土壌が圧縮されたことが、地盤沈下の原因」と特定。「北京では1935年から地盤沈下が進行しているが、沈下率は驚くべきスピードで加速している」と指摘した。

 経済成長と都市化を背景に急増する北京の水需要は、供給可能量を大幅に上回っており、飲料水や工業用水などの水需要の3分の2を地下水に依存しているという。調査団は北京を「世界で5番目に『水ストレス』が高い都市」にランキング。水ストレスがさらに高まる恐れがあるとみている。

 その上で、沈下率の加速により、「鉄道や建物などの構造物が損傷を受ける可能性があり、公共の安全性が脅かされている」と警告した。調査団は、今年後半に高速鉄道など重要インフラ設備の沈下について調査・分析を行うことにしている。
 
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 地盤沈下は北京だけでなく、中国各地で進行しており、調査団の研究者は、「45都市で深刻な地盤沈下が起きている」と述べた。

 中国メディアによると、海抜が4メートルしかない上海などの長江デルタ地帯の都市では、地球温暖化による海水面の上昇も重なり、2050年には水没するとの予測データもある。

 中国政府も地盤沈下への危機感を強めている。2012年には、地盤が20センチ以上沈下した土地が全国で7万9000平方キロメートルに達したと発表した。これを受け、政府は地盤沈下を防止するための計画を決定。多くの都市で、地下水の使用を制限し監視するよう求めている。北京では、郊外から水を供給する運河などのインフラ整備が進められているほか、今回の調査で10センチの沈下が観測された朝陽地区では、約370カ所の井戸の使用を停止する計画だという。国際調査団の研究者は「地下水のくみ上げを停止すれば、地下水の水位も回復し、地盤沈下をとめることができる」と指摘している。

 地盤沈下の激しい都市では、地下の上下水道の損傷や高層ビル周辺の地面のひび割れといった被害が出ているほか、地盤沈下が原因とみられる道路などの陥没事故も相次いでいる。今年5月には、北京と上海を結ぶ高速鉄道の線路から100メートルしか離れていない場所で、深さ10メートルの巨大な陥没が起きた。

 将来的な都市の水没にとどまらず、鉄道やビルの倒壊といった重大事故がいつ起きてもおかしくない状況にあり、早急な対応が求められている。
 
http://www.sankei.com/premium/news/160812/prm1608120013-n1.html