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景気低迷が深刻な中国遼寧省の工業地帯=7月10日(共同)

 経済が減速する中国で不良債権に対する懸念が高まってきた。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の統計によると、今年3月末時点で商業銀行が抱える不良債権残高は1兆3921億元、不良債権比率は1・75%と7年ぶりの水準まで上昇。過剰債務を抱える企業の経営不振が長引けば、将来的には不良債権が急増する恐れがある。専門家は「今後も注意は怠れない」と警鐘を鳴らす。

不良債権の実態は

 日本のシンクタンク「ニッセイ基礎研究所」経済研究部上席研究員の三尾幸吉郎氏によると、中国の貸出債権は、「正常」「関注」「次級」「可疑」「損失」という5段階に分類されている。危険性の高い方から「次級」「可疑」「損失」の合計が不良債権となる。

 今年3月末時点では不良債権比率は1・75%だったが、不良債権ではないものの、今後返済に不安が残る「関注」を含めると5・75%に達する。

 三尾氏は「諸外国の事例を見ても、不良債権に分類するのを銀行経営者は躊躇(ちゅうちょ)しがちになる。通常の不良債権比率に加えて『関注』を含めた広義の不良債権比率も確認しておきたい」と注意を促す。

 その言葉通り、今年4月に国際通貨基金(IMF)が公表した国際金融安定性報告でも、中国では、事業収益が支払利息を下回るような潜在的に貸し倒れリスクを抱える債権が多いと指摘されている。

貸し倒れの備えは

 貸し倒れに備えたリスク管理については、貸倒引当金カバー率と自己資本比率が重要になる。

 中国の商業銀行は貸し倒れに備え、今年3月末時点で2兆4367億元の貸倒引当金を計上。これは不良債権残高を上回り、貸倒引当金カバー率は175・03%に上る。

 ただし、こうした不良債権に「関注」を加えた「広義の貸倒引当金カバー率」を計算してみると、53・11%にとどまり、三尾氏は「安心できる水準とはいえない」と指摘する。

バランス崩壊の危険

 銀行の収益力も、不良債権問題を考える際には重要な指標となる。

 不良債権が増えたとしても、それを上回る収益力が銀行にあれば、不良債権の処理は可能だからだ。

 同研究所が昨年の中国の大手4行(中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行)の財務諸表を集計したところ、営業収入は約2・27兆元、営業費用は約0・83兆元、営業収支は約1・44兆元だった。

 そこから貸倒引当金の計上や直接償却による減損損失(約0・32兆元)を計上し、営業利益は約1・12兆元。他方、不良債権残高は前年末に比べて約0・22兆元増、「関注」を含めると約0・54兆元増だった。

 そのため、大手4行の収益力は不良債権の増加ピッチ(減損損失を含む)を上回り、今のところコントロール可能な範囲内とされている。

 ただし今後、金融自由化の進展で銀行の収益力に陰りがみられ、過剰債務の整理が進み不良債権の増加ピッチが加速することも懸念されている。

 収益力と不良債権増加ピッチのバランスについて、三尾氏は、今後の見通しを「逆転する恐れもある」とし、中国経済に影を落とす可能性を強調する。
 
http://www.sankei.com/west/news/160811/wst1608110004-n1.html