中国 
(イメージです。)


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:2016/06/25(土) 20:43:53.67 ID:
東アジアではアメリカ軍と同等の軍事力

このたび、『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』(講談社現代新書)を上梓した。

「パックス・チャイナ」という言葉は、私の造語である。

古代の地中海世界で展開された「パックス・ロマーナ」(ローマ帝国のもとでの平和)、産業革命後の「パックス・ブリタニカ」(大英帝国のもとでの平和)、第二次世界大戦後の「パックス・アメリカーナ」(超大国アメリカのもとでの平和)などに続き、習近平主席は21世紀のアジアに、「パックス・チャイナ」(中華帝国のもとでの平和)の構築を目指している。

古代から19世紀前半まで、長年にわたってアジアには、「冊封体制」と呼ばれる「パックス・チャイナ」が機能していた。これは、宗主国である中国と、属国(朝貢国)である周辺国との「緩やかな主従関係」だ。

ただし、中国大陸と海を隔てている日本と、高い山を隔てているインドは、このシステムに組み込まれずに生存できた。

1840年になってアヘン戦争が起こり、清帝国はイギリスに屈したことで、「世界ナンバー1」の地位を失った。

それから約半世紀後の1894年に日清戦争が起こり、清帝国は日本に屈したことで、「アジアナンバー1」の地位も失った。

こうして20世紀の前半は、日本がアジアを軍事的に支配した。20世紀後半は、引き続いて日本が経済的に、そしてアメリカが軍事的に支配した。

21世紀に入って、周知のように中国の台頭が目覚ましい。2010年に中国は、GDPで日本を追い抜いて、アメリカに次ぐ世界ナンバー2の経済大国にのし上がった。

中国は、公表している経済統計も軍事費も正確さと透明性に欠けるが、私の推定では、経済力でアメリカの3分の2、軍事力でアメリカの3分の1規模まで来ている。

軍事力に関して言えば、世界中に展開しているアメリカ軍と違って、人民解放軍は東アジア地域に集中しているので、東アジアにおいては、すでにアメリカ軍と同等の能力を有していると言ってよい。

換言すれば、20世紀と21世紀しか実感のない現存の日本人が未経験の世界に、アジアは突入しつつあるのだ。それが、「パックス・チャイナ」の世界である。

安倍政権は「中国に対抗する」選択肢を選んだ

日本は、2世紀ぶりに「アジアの中心」に躍り出つつある中国と、どう対峙していくか。これは21世紀日本の最大の外交問題である。

その選択肢は大別すると、「中国に従う」「中国に対抗する」「中国を無視する」……と、いくつか存在する。

2012年12月に発足したいまの安倍晋三政権は、「中国に対抗する」という選択肢を選んだ。この3年半の安倍外交は、「中国への対抗」という一点に収斂されると言っても過言ではない。

現役の首相として、10年前に退陣した小泉純一郎首相以来となる靖国神社参拝を果たしたのも、昨年4月にアメリカ連邦議会で演説したのも、今年3月に安全保障関連法を施行させたのも、すべては中国に対抗するためだ。

今年3月に内閣府が発表した世論調査によれば、日本人の実に83・2%が、中国に親しみを感じていない。

日本が100年以上維持してきた「アジアの盟主」の地位を、中国が奪おうとしているのだから、日本人の中国への嫌悪感は、ある意味、当然とも言えるだろう。

また安倍政権は、そうした国民の「反中感情」のバックアップを受けて、3年半に及ぶ長期政権を維持しているのである。

週刊現代 文/近藤大介(週刊現代編集次長)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48975

続く