中国経済 
(イメージです。)


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:2016/06/02(木) 16:24:22.44 ID:
インターネット上で資金の貸し手と借り手を結びつけ、個人間の融資を仲介するサービスP2P(ピアツーピア)が、中国経済を揺さぶっている。

経済成長のカンフル剤としての役割を期待されてきたが、ここにきてP2Pの大手業者が詐欺事件で摘発されたり、不動産バブルの要因として批判されたりしている。

中国当局はようやく悪質業者の取締り強化を打ち出したが、中国経済の新たな火薬庫として急浮上している。

ブルームバーグは4月21日、中国当局が来年1月までインターネット金融を取り締まるキャンペーンを展開しており、金融会社の新規登録を停止した、と報じた。

規制の対象となるのは、急成長を続けるP2Pのほか、投資会社やネット保険。昨年12月には、中国銀行業管理監督委員会がオンライン金融の規制草案を発表。

住宅ローンの頭金に自己資金ではなくP2Pのローンを利用することについて、「不動産バブルを助長させる」と当局ににらまれた格好だ。

この問題を報じたウォールストリート・ジャーナルは、中国の著名投資会社の幹部21人が違法な資金調達の疑い(詐欺)で逮捕されたことや、上海市政府が金融当局に監督強化を求めたことが規制強化の背景にあるとしている。

詐欺の被害総額は500億元(約8400億円)とされ、地元マスコミは「中晋事件」として大々的に報じた。

3月15日付の英フィナンシャル・タイムズは、「P2Pローンは米国のサブプライム危機のときに売られた商品の一部より、リスクが高い」という金融専門家のコメントを紹介した。

P2Pは分かりやすく言えば、消費者金融のインターネット版。もともと、P2Pは2005年にロンドンで生まれ、借り手、貸し手の双方に利便性があり、世界各国に広がった。P2Pの規制がない中国では、10年ごろから増え始め、現在はネット上のプラットフォーム(業者)は2500を超えるとされる。

金利は10~20%台と高く、銀行を介さない金融取引、シャドーバンキング(影の銀行)の一種とされる。ちなみに日本では近年の超低金利もあってP2Pの活躍する余地がなく、ほとんどその存在が聞かれない。

三菱東京UFJ銀行のまとめによると、15年7月末時点で、中国のP2P貸出残高は2391億8000万元と、14年末の2.3倍に達した。

中国では当初、P2Pが経済の潤滑油としての役割を果たした。商業銀行から融資を得られなかった中小零細企業や個人向けの新たな資金調達ルートとなったからだ。

月給を1カ月で使い切ってしまうほどの浪費生活を送る中間層の若者「月光族」がP2Pを利用するケースもメディアで紹介され、ロイターが「限界まで浪費する新世代が中国経済のカンフル剤となるかもしれない」と論評したほどだ。

最近では、ネットを通じて集めた資金を不動産開発に投資するなど業態が拡大。国有企業や銀行、上場企業なども積極的に業界に参入するほどだった。

だが、一部の業者が貸出審査やリスク管理のノウハウがないまま経営規模を拡大させた結果、不良債権を抱えるなどして、詐欺や夜逃げに至るケースが多発。

ウォールストリート・ジャーナルは2月8日、中国のネット金融サービス会社「網貸之家」の報告として、1月にP2P業者54社で幹部が逃亡しており、19社が閉鎖したと伝えた。

ただ、欧米ではP2P市場が有望視されている。本家の英国では昨年3月、中小企業の融資申し込みを断った大手銀行に対し、P2P業者などへの情報提供を義務化するなど、市場整備を進める。

米国でも、P2P業者が新規の利用顧客獲得に向け、銀行やオンライン取引サイト運営会社などとの提携を進める。

だが、悪質業者がはびこる中国の場合は、このまま放置すれば、火に油を注ぐことになりかねない。当局が取り締まりに動き出したものの、健全な発展には時間がかかりそうな雲行きだ。

産経新聞 2016.6.1 (鈴木正行)
http://www.sankei.com/premium/news/160601/prm1606010003-n1.html